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お客様インタビュー
印刷物の立体表現。特殊印刷で潜在需要喚起B to C市場開拓のツールに
購入機器 | JETI MIRA LED |
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事業内容 | サイン&ディスプレイ |
▲S&D部に設置されたJETI MIRA
商業印刷を手掛ける大洋印刷(株)(本社/東京都大田区昭和島1-6-31、林健司社長)は今年2月、顧客とともに創造するアイデアやデザインを「印刷物」に落とし込むデバイスとして、「厚盛り」「3D レンズ」といった特殊印刷機能を備えたアグフアのハイエンドフラットベッドUVインクジェットプリンタ「JETI MIRA2732HS LED」を導入。サイン&ディスプレイ事業における「立体表現」の訴求で、新たな需要創出に乗り出している。
「機動力」と「技術力」
▲林 社長
大洋印刷は、1930 年に東京・築地で創業された総合印刷会社。現在は、本社機能を持つ東京・昭和島の「t・Palette」と埼玉・加須市のオフ輪工場「TAIYO WAVE」という2つの生産拠点を中心に、デザインから印刷・加工、マルチメディアまで、商業印刷分野をトータルにカバーしている。
昨年8月に創業90周年を迎えた同社。取締役生産本部長の白井光男氏に「強みは?」と聞くと、ずばり「お客様」という答えが返ってきた。90 年におよぶ社歴の中で、大手の流通企業やデザイン広告会社との直接取引を通じて培った「機動力」と「技術力」が同社の成長エンジンになっている
ようだ。
それを象徴するきっかけとなったのが、印刷会社として初めて開催したポスター展だ。1985年にレスポンス技術を駆使したイメージミラー展(ポスター展)を開催し、その後も計4回開催。さらに1987年のニューヨーク・アートディレクターズクラブ国際展では日本初の金賞を受賞し、1989年にも2度目の金賞に輝く快挙を成し遂げている。白井本部長は、「これら栄誉を賜る過程で、営業(機動力)と生産(技術)の協業によってお客様の要望をディレクションするという大洋印刷の事業スタイルが育まれた。昨今は、印刷通販ビジネスのようにデータをオンライン入稿すれば印刷物ができる時代ではあるが、その中で当社はお客様と真正面から向き合うという企業姿勢を大切にしている」と胸を張る。
「これまでできなかったことができ るプリンタ」
▲白井 本部長
商業印刷分野をメインとする同社では、10年ほど前からサイン&ディスプレイ分野にもその守備範囲を拡げている。その中で、既設の大判UV インクジェットプリンタの保守終了にともない設備更新を検討し出したのは昨年のこと。その機種選択における絶対条件となったのは「これまでできなかったことができるプリンタ」である。白井本部長は、「お客様は『他にないもの』を求めているが、従来機ではどうしても小ロットのサイン&ディスプレイ分野の域を脱しないと諦めていた。しかし、コロナ禍にともなう『7割経済』が現実味を帯びつつある中で、広告代理店やデザイナーに対する新たな提案の必要性を痛感するようになった。そこで創造されるアイデアやデザインを『印刷物』に落とし込めるデバイスを条件に機種検討に入った」と振り返る。
およそ10年ぶりのプリンタ更新となることから、当然のことながら品質や生産性、いわゆる性能向上は必須条件だ。その上で、どのような新しいアプリケーションへの可能性に投資するか。そこで同社が着目したのが「印刷物の立体表現」だ。結果、その条件を満たすプリンタとして、アグフアのハイエンドフラットベッドUVインクジェットプリンタ「JETI MIRA 2716 HSLED」が選定された。
「圧倒的な生産性」に加え、「新たなアプリケーションへの開発意欲を掻き立てるプリンタ」として高い評価を得るJETIMIRA。その代表的な特殊機能が白インクの「厚盛り」とニスを使った「3Dレンズ印刷」 である。
プリプレス部S&D 部担当の齋藤孝之執行役員は、「これら付加価値創造機能は機種選択を左右する大きな要素となった。とくにクリアニスによる3Dレンズ印刷のチェンジング表現は他機にない機能で、導入を決定づけた」と説明する。
「白インクの厚盛り」は、言うまでもなく、実際のデザインの質感や凹凸感をリアルに表現できる。一方、JETI MIRA による3Dレンズ印刷とは、専用のソフトウェアを使い、視覚効果によって立体的な表現を実現するもの。裏に6色+白を印刷した後、表にクリアニスで小さな球状のレンズを印字 することで3D効果を表現できる。これら特殊機能による多彩な表現への期待をのせて、JETI MIRAは今年2月6日に設置され、すでに商業ベースでの運用が始まっている。
「圧倒的な生産性」と「微細な文字 表現」
▲斉藤 執行役員
実際の運用を担当するS&D 部制作課の丹田大輔係長は、「第一印象は、やはり圧倒的な生産性だった」と話す。もちろん、10年前の従来機との比較になるわけだが、B全換算で約8分程度かかった仕事がJETIMIRA ならば4分、半分程度で処理できる。導入後初の実績として、2×1・5メートル、厚さ3センチの木の板への印刷4枚を納期1日で処理したという。
「これはお客様立ち会いの仕事だったが、JETI MIRAが様々な表現が可能なことから、お客様側でイメージが膨らみ、どんどん要求が増していった。従来機なら『これ以上できません』と言うこともあったが、JETIMIRAはその要求を満たしていく。結果、当社に対する期待が高まり、さらなる可能性を感じていただけたと思う。今後は、デザイン会社などにも公開し、デザインやアイデアのイメージを膨らませてもらうきっかけを提供できればと考えている」(白井本部長)
さらに丹田係長は、現場から見た品質面での評価として、仕上がりをグロス調、マット調にコントロールできるモード設定による「色の出方」、高解像度による「描画性」および「小さな文字の再現性」を挙げている。「先日、細かな文字の仕事があり、溶剤系のプリンタで出力した方が良いと判断したが、試しにJETI MIRAで印刷したところ、こっちの方が微細に表現できており、正直驚いた。一般的に大判インクジェットの場合、そこまで解像度を必要としていないが、この微細な表現は大判インクジェット分野の差別化になり得る」(丹田係長)
さらに、「インクの密着性」もアグフアプリンタの大きな特長である。同社でも、従来機で使用していたインクが堅く、プライマーも必要だったが、JETI MIRAは同じ仕事をプライマーなしで直接印刷してもインクが剥がれにくい。「インクが軟らかいため、例えば印刷後に折り曲げてもインクが割れない。現在も木やアクリル板、銅板などに印刷しているが、このインクには印刷素材や加工の幅を広げる可能性を感じる」(丹田係長)
BtoC への可能性も
▲丹田 係長
今回のJETI MIRA 導入に際して、同社では全社の営業マンを対象に説明会を実施するなど、同機による新たな事業展開に力を入れている。今後は、JETI MIRA の特性を生かした様々なアプリケーションの試作を作成し、営業と生産が一体となって、クライアントに対して積極的にアウトプットしていく考えだ。齋藤執行役員は、「JETIMIRAの特殊印刷機能の可能性を実際のサンプルで示し、クライアントの潜在ニーズを引き出すこともできる。『どこにもできない印刷を手掛けたい』という我々の思いを実現させるため、さらに特殊印刷の幅を広げ、プロである同業者にもプレゼンできる体制を整えたい」と語る。
一方、白井本部長は、コロナ禍においてJETI MIRAがBtoCへの可能性を切り拓くツールとして機能することも示唆しており、「3D レンズを使った『いままでにない印刷物』の訴求は、ネット販売との親和性も高いと考える。生産性を高めることでコスト競争力を高め、BtoCの世界で十分戦える市場開拓にも乗り出す必要性を感じている」とし、今後は特許申請を含めた、JETIMIRAによる商品開発・展開に注力していく考えだ。