私は自動車製造業に従事しており、エンジン製造部にて技術員として働いています。SUVや高級車のエンジン製造を主に行っております。

1年程前に、海外の工場で仕事をする機会がありました。工場内に入ると、内装全面がデザイン性のある壁紙にラッピングされており、非常に明るく、入りやすい印象を受けました。働いている方々の遊び心を感じ、「ここには気難しい人がおらず、楽しく働けそう」というポジティブな気持ちをもてた事が印象的で、国内の工場で働く従業員にも同じ想いをもってほしいと思ったのがきっかけです。

弊社は歴史の長い会社ということもあり、規律と効率を重視し、無駄をなくすことを最優先にしてきました。弊社だけでなく、多くの歴史ある日本企業では「会社は働く場所、営利企業として遊び心はいらない」と考えられがちではないでしょうか。しかしこれからの多様性を重視する社会を考えると、これは企業の中での「悪い当たり前」ではないか？今後、時代に適した会社を目指し、従業員のモチベーションアップや心理的安全性を確保するためには『多様性』を受け入れる姿勢が重要だと常に感じています。
しかし、この考えを現場で働く従業員に言葉だけで伝えても、実際に意識まで変える事は難しいです。それならまずは景色を変える、視覚・ビジュアルで訴えるのが良いと考えました。最初はラッピングを外注することも検討しておりましたが、自分達で意見を出し合って些細な部分もすぐ作れるようにしたいと考え、内製化を選択しました。その後、海外の工場で使用されているプリンターを調べるとラテックスプリンターを使っていることが分かりましたので、検索して出てきた「大判プリンター比較.jp」のサイトから問い合わせしました。

導入後、その日のうちに印刷作業を開始しました。貼り付け作業は難しく、3人がかりで一枚一枚作業を行いました。約30枚の貼り付け作業に3日間を要しましたが、匂いなどは気にならず、耐候性についても問題ありませんでした。別拠点の工場担当者も見学に来ており、他の工場でも同じように詰所装飾を展開する可能性はあります。

従業員同士の会話が弾むような共通の話題となるデザインを考えた結果、弊社所属の陸上選手と車の画像を組み合わせたデザインを工場内にラッピングしました。また、従業員からアイデアを募り、昭和レトロをテーマにしたポスターを休憩スペースに装飾したり、昔の鉛筆削りやそろばんを置き、懐かしさを感じられるデザインにしました。
従業員自身が案を出して作成したため、愛着のある空間ができ、これまでは休憩中に仮眠をとる社員が多かったのですが、最近ではラッピングした内容をきっかけに会話を楽しむ社員が増えています。コミュニケーションが活発になり、『多様性』を受け入れる土壌のきっかけ作りが出来たと感じています。
また、パートや派遣など社外戦力として働いてくれている方の割合も増えています。そういった方々にも働く事を楽しんでほしいと思っていたのでこの変化はとても良かったです。

正直、デザインソフトも触った事がなかったので少し不安はありましたが、導入前にオンラインでデザインソフトからプリンタ―の操作方法まで、こちらの不明点を解消する場を作ってくれたので安心して導入できました。
流石に施工作業は難しく、3人がかりで施工したり、全体の装飾完了に3日間を要しましたが、結果的に実現したい事が出来たので満足です。
実は、最初に問合せをした際はプリンタ―だけあれば良いと思っていましたが、床面の装飾や変形サイズのステッカー作成まで考えるとラミネーターやカッティングプロッタもあった方が良いと教えてもらい、一緒に導入しました。結果ラミネーターのおかげで表面の強度がアップし、カッティングプロッタがあるとカットの手間が大幅に削減されるので、こちらも導入して良かったです。使い方のレクチャーも何度か依頼していますが、オンラインと訪問両方でフォローしてもらっているので非常に助かっています。
また、ラテックスプリンターは印刷できる素材が豊富という事で、特殊なインクジェットメディアもたくさんあると教えてもらいました。具体的にはシースルーフィルムを使った窓ガラスの装飾、ホログラム素材を使ったステッカーなど、アイディア次第で様々な用途で役立てていけると考えています。

工場内の内装のラッピングを定期的に変更していくことで従業員同士のコミュニケーションを活性化させ、『働きたいと思ってもらえる職場環境』をつくり、より良い企業を目指していきます。また、別拠点の工場担当者も見学に来ており、他の工場でも同様の取り組みを波及させていく予定です。