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デジタルプリントで成功を納めるためのリスクヘッジ

デジタルプリントで 成功を納めるためのリスクヘッジ

業界としての飽和状態、展開するメディアの切り替え等の逆風を受け、今印刷業界・看板サイン業界に新たな展開が求められている時代になりました。
前回の記事では、「デジタルプリント壁紙とは何か」「どのような市場が眠っているのか」についてご紹介をしましたが、今回はより具体的な内容をご紹介します。

業界が置かれている状況、頭打ちからの脱出

前書きでも書いたように、印刷業界・看板サイン業界にビジネスの転換期が訪れています。

業界自体がなくなる事はありませんが、設備さえ用意すればだれでも参入できる手軽さが仇となり、

業者の飽和により「急激に加速する価格競争」「需要のある媒体の原価が高額」「デジタルサイネージの普及による広告媒体の移行・市場縮小」「生き残り競争の激化」が起きている中、踏ん張りよりも「次の一手をどう打つか」と新たな活路の開拓が今求められています。

そこで新たなビジネスとして最も注目されているのが国内の市場として7億㎡が見込まれている「デジタルプリント壁紙」です。ドイツでは、約8億㎡の市場規模に対し2~4%がデジタルプリント壁紙ですが、日本は7億㎡の内1%も達していないカバー状況です。

印刷・看板サイン業界とデジタルプリント壁紙業界はどう違うのか、発生する金額で比較をします。
まずターポリン・塩ビの印刷の場合は下記の費用が掛かります。

メディア = @300円/㎡
インク = @700円/㎡
ラミネート加工 = @300円/㎡


原価 = @1,300円/㎡+カットや二次加工による人件費
売価 = @2,500~3,000円/㎡

この場合、おおよそ回収できる粗利は、1㎡あたり約半分の1,500円も達すれば良い方です。
それに比べてデジタルプリント壁紙の場合は下記になります。(ラテックスプリンターを使用)

メディア = @830円/㎡
インク = @400円/㎡
ラミネート加工 = なし


原価 = @1,230円/㎡
売価 = @5,000~6,000円/㎡

売価が高く設定できる理由は、市場価格が崩壊していない事と、水性インクのため安全性が高く、臭いのないラテックスインクによって高い付加価値を創出出来ている点です。

ラテックスプリンターの速乾性は顧客満足度アップと、人件費の削減に!

更にラテックスプリンターの魅力である「インクの速乾性」は、印刷後二次加工をせずにすぐにお客様へお届けできる手離れの良さが、業務の負荷軽減に貢献します。これまでの印刷業界では、出力に夜通し付きっ切りでチェックが必要であったり、出力後乾燥を待つためにすぐにロールに巻く、またラミネート加工もできないため1件当たりの作業も想定外の人件費と時間が発生してしまうケースもありました。

ターポリンは二次加工を外注に出すところも多く、売価の設定がさらに高くなります。ですが、壁紙の印刷は取り扱うメディアが複雑・手間な加工を必要としないため人件費や外注費の軽減を図ることができ、カットは現場で寸法を合わせながら行うので、事前のカットも必要なく、印刷を終えた段階で裁断するのみの加工と、まさに手離れの良さが表れています。

デジタルプリント壁紙は半永続的に発生するビジネスチャンス!

「印刷」というカテゴリーにおいて、紙への印刷市場が縮小していく中、次の一手として壁紙等の内装インテリア、ファブリック素材、カーラッピング等の分野への参入による成功事例が増えてきています。これらは全て、これまで築き上げてきたノウハウがそのまま活用できる産業であるため、スムーズな参入が出来ることが魅力です。当然、そうなればいつかは業界としての頭打ちが来てしまう事が考えられますが、デジタルプリント壁紙は、「住」に関する事、貼り換えという半永続的に発生するビジネスチャンスを秘めている事から、頭打ちが起きないサイクルが出来ているともみられています。

手軽さだけではないデジタルプリント壁紙の注意すべき点

手軽さはもちろんですが、その反面注意すべき点が多々あります。建物の内装であるため建築に関する法の厳守は避けれません。
まずは注意しなければいけないポイントをご紹介します。

シックハウス症候群における3つの注意点

シックハウス症候群シックハウス症候群とは、有害な化学物質、カビ・ダニ等により室内空気が汚染され、吸引などから人体への悪影響が出た時にその症状に対してよく表現されます。用語としては、医学的に確率された疾患自体を指すのではなく、住居における様々な健康被害の総称とされています。
シックハウス症候群の原因はあらゆるところに眠っています。それは壁紙が直接の原因でない場合もあります。
「デジタルプリント壁紙+シックハウス症候群」において気を付けるべき点としては、3つあります。

注意点その1 壁紙材は不燃・準不燃・難燃のどれかで

1つが「壁紙材」です。壁紙は建築基準法・消防法により不燃・準不燃・難燃のどれかでなければいけませんが、パルプから生成される紙では当然すぐに燃えてしまうため生成する素材も不燃性の高いものを選ばなければいけません。
今日本で最も出回っている壁紙が塩化ビニール製のクロスですが、塩化ビニールは本来硬い素材であるため壁紙に使えません。可塑剤を混ぜて柔らかくすることで壁紙としての活用ができますが、この可塑剤にホルムアルデヒドが含まれているものもあります。

注意点その2 接着剤による刺激臭

次が接着剤です。壁紙として貼る上では接着は必要不可欠です。接着剤も同様にホルムアルデヒド等の有害物質を含んでいる物もあるため、施工の際は使う接着剤にも注意が必要です。鼻を刺すような刺激臭がする場合は、疑っても良いかもしれません。

注意点その3 強い揮発性有機溶剤を含んでいる可能性のあるインク

最後にインクです。インクも様々な種類があり、健康被害の無い物、規模によっては影響がでる物もあります。
強い揮発性有機溶剤を含んでいる場合、頭痛・めまい・中核神経や腎臓及び肝臓への機能障害等を引き起こす可能性が極めて高く、取り扱うインクはしっかりと選定をしなければいけません。
日常的に吸引していれば、これらの健康被害がいつ起きてもおかしくない状態となります。

F☆☆☆☆健康に対する安全保障に「F☆☆☆☆」という等級区分があります。「F☆☆☆☆」スターの認定を受けたものは規制の心配もなく、健康被害が無い事が立証されています。その他の認定レベルの場合、使用面積の制限や使用禁止を言い渡されてしまいます。

ホルムアルデヒド発散速度と☆の数

等級 ホルムアルデヒドの発散速度 建築材料
0.12mg/㎡ h 超 第1種ホルムアルデヒド発散建築材料
F☆☆ 0.02mg/㎡h超 0.12mg/㎡h以下 第2種ホルムアルデヒド発散建築材料
F☆☆☆ 0.005mg/㎡h超 0.02mg/㎡h以下 第3種ホルムアルデヒド発散建築材料
F☆☆☆☆ 0.005mg/㎡h以下 上位グレード

もし、健康被害の報告が出れば、様々なトラブルに結びつきます。
例えば、店舗に対する施工を行ったケースで健康被害の報告が出れば店舗自体の営業処分が言い渡されてしまう事もあり改善できるまで営業はできません。
その間の損害賠償をどこに責任を持たせるかという問題に発展するリスクもあります。「F☆☆☆☆」に認定された壁紙、接着剤、インクの利用を徹底しましょう。

不燃認定

不燃認定
建築基準法だけではなく消防法としても気を付けなければいけません。
建物の内装である以上、可燃性の物を使うわけにはいかず、まずは「不燃」「準不燃」「難燃」の3つからメディアを選びます。ただここに落とし穴があります。この「不燃」「準不燃」「難燃」の判定は、組み合わせによって変わるということです。
例えば、メディアを不燃の物で施工したとしても下地材とインクが可燃であれば、いずれかの判定結果を受けることは出来ません。
火災は人命にかかわる問題であるため、あつかう資材は厳重なテストがあり、そこを問題なく通って初めて認定を受けれます。すべての要素が「不燃」で構成されればまず問題はなく、安全の保証となる「防火施工管理ラベル」を手にすることができます。これはお客様の安心感へ付加価値として付与することが出来ます。

これらを厳守することは決して難しい事ではありません。お客様へデジタルプリント壁紙を提供するときは、正しい法律の知識を持ちルールを守り、あらゆる面でのリスクヘッジを心がけましょう。
参考として、どういうケースで「不燃」「準不燃」「難燃」の判定がされるのかをご紹介します。

認定例

なお、不燃認定では、ちょっとした小ネタもあります。,
糊付きの壁紙メディアを元から貼られている壁紙の”上から貼った”場合、実は不燃認定は不要となるようです。
理由は貼って剥がせるという点と、壁紙自体を張り替えるわけではないという事から”ステッカー”と同じ扱いを受けるからとなります。

デジタルプリント壁紙のターゲットについて

マーケットデジタルプリント壁紙のターゲット市場は、コンシューマー(BtoC)から法人(BtoB)まで幅広くあります。
コンシューマーの場合、「一般層」「富裕層」のカテゴリーがあり、それぞれ共通するのは「自宅の壁をデジタルプリント壁紙に」です。
しかし、注文方法と需要に大きな違いが現れると想定されています。例えば、一般層はDIYの傾向が強くあり、一つのブームになっています。
すでにDIY市場ではフリース壁紙等の商品が広く認知され、気軽に貼り剥がしが出来るという点からかなりの評判を集めています。
販路としては、ECサイトと小売店(ホームセンターや百貨店等)での購入が主となります。

富裕層については、DIYよりも完全オリジナルをオーダーで業者に依頼する傾向が強くあります。一般層と違い付加価値に対する評価も高いため、高級志向のデザイン、提案力、貼るメディアの品質やインクの種類などから付加価値を付与できれば、より収益性を高めることが出来ます。富裕層への販路は、向けの販路は、空間デザイン会社やインテリアデザイン会社等とのコラボレーションによるサービス提供型の販売が見込まれます。

法人は、不動産における需要が最も見込め、その中で1番期待が持てるのが賃貸などのリノベーションのタイミングに行う貼り換えやアフターサービスとしての貼り換えです。これは不動産や大家、設計事務所等にリノベーションのタイミングで依頼を受けられるよう営業をかけます。
入居にあたっての付加価値としてデジタルプリント壁紙が取り入れられている事例もあります。

深刻化する空き家問題、解決策は「物件の付加価値」と「写真映え」。

次いで、ターゲットとして多店舗展開の飲食店や商業施設のテナント、アミューズメント、博物館や美術館等の観光地等の建物の施工があります。
ラテックスプリンターを使う事が出来れば、インクの臭いも無いため、医療系(病院・クリニック)、学校系、飲食店のような臭いにデリケートな業界向けに差別化しやすいです

法人でのデジタルプリント壁紙の利用は、世界的で行われています。アパレル関係でもブランディングとしてモデルの写真を壁一面に貼るといった試みや、学校では英単語やキャラクターをあしらった壁紙を貼り、病院では落ち着きの空間を演出するために森林の写真を貼るといった試みも行われています。
ホテルなどでも、宿泊する部屋の印象付けとしてデザイン性の高い壁紙を貼り付けている所もあります。

販路としては、内装会社、施工会社、空間デザイン会社等とのコラボレーションにより設計・施工の段階から関わっていくことで、市場開拓もスムーズに行えます。

くつろぎの空間を提供する事(まとめ)

デジタルプリント壁紙施工例

デジタルプリント壁紙は、表現力と応用力の高さから様々な利用用途があり、リフォーム需要の拡大と併せて今後さらに開拓がされていくと見込まれています。ですが、大前提として、室内・建物内の内装の表現を変える事による「その空間の演出」が基本となります。
住宅であれば、日常生活の中で外観よりも内観を見る時間が圧倒的に長く、落ち着きのない奇抜さ、悪性の化学物質を含んだ素材の使用等、日常生活で違和感を感じる空間で長時間くつろぐことはできますでしょうか。

お客様の要望によっては、時として奇抜な依頼が来る事もあります。
その中で、提案・提供側として最低限、お客様の意図を理解しつつ、よりよい壁紙の提案が出来るようにまずは目指した方が良いです。

デザインの幅、メディアを駆使したコストの調整、壁紙に+αできる提案、安全保障、これらが揃ってからが勝負となります。新たな市場で勝てる勝負をしかけるためにも、デザイン会社や出力会社、内装会社等の異業種とのコラボレーションを行い、見込み層へのデジタルプリント壁紙の認知度の向上や価値を広げ、新たな市場を創出して行くことが最大のポイントです。

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